子どもの最善の利益を追求し、一人一人の子どもを大切に保育を行います。
また、現在を最も良く生き、望ましい未来を創り出す力の基礎を培います。
同時に全ての子育て家庭を視野に入れ、子育てに関する支援事業をおこない、
地域の子どもも含めた子どもの育ちを、総合的に支援します。

保育園の概要

保育者の価値観

今年の園内職員研修(8月)で、あすか保育園に来ていただき、職員が受講する予定の、野籐弘幸(作業療法学博士)さんの言葉です。     

 『「生きる力の幅」といいましょうか、それが狭くて、今、過ごす場所で困っている、こどもがいるのなら、その子にあわせた手助けは、より広い幅をもつこどもにとっても役立ちましょう。    「愛する」とは、あいまいな言葉に感じます。しかし、これは、「私」の身体の感覚を通して、「あなた」の感情を推しはかり、私をあなたに置き換えて、私なら「こうしてほしい」、と思うことを、あなたに行う、共感の行為です。』   

私(園長)は、この言葉を聞いて、とても心が揺さぶられました。そして野藤さんの「発達障害のこどもを行き詰らせない保育実践」(郁洋舎)には、こんなことも書かれていました。

『こどもを育て、子どもに育てられて、でも、そのときそのとき、自分がこうしようと思った対応を試みる。こうした積み重ねの中で、保育者は保育者である以上に、ひとりの人間として自分を見つけていくのではないでしょうか。』

子どもと向き合う時、一生懸命生きようとする、育とうとする子どもを前に、自分の価値観が問われ、どうしたもんだろうと、壁にぶつこることがしばしばあります。そんな保育者の心情を野藤先生はわかっておられるのだなぁと思いました。

今年も、職員みんなで学びを深めながら、「子ども理解」に努めていきたいと思います。


旅立ち・出会い

2023年3月22日、卒園式。式での園長からの餞(はなむけ)の言葉です。     

伊藤アサさんの「足し算の時間、引き算の時間」という話を教えてもらいました。引き算の時間とは、いついつまでにこれをしなあかんとか、目標から逆算する大人の時間です。これに対して、子どもはもっと遊びたい、もっと友達といたいという、もっともっとと続くいわば子ども時間です。楽しいからもっと野球がうまくなりたいと思う少年は、やがて今度の大会までにこれだけ練習するんだというふうに、引き算の時間を自ら進んで受け入れていきます。保育園時代に大切なのは足し算の時間で、子どもが子どもの時間を、子どもの時代を十分に生ききれるように、保護者の方にはこれからもサポートしていただきたいと思います。大人がどうしてほしいかではなく、子どもが何をしたいのか、何を足そうとしているのかに、心を傾け、耳を傾け、子どもと共に大切な時間を過ごしてください。あすか保育園の職員もずっと応援しています。卒園おめでとう!

2023年4月6日、入園式。入園式でも、同じ内容の言葉を保護者に送りました。保護者はとてもしっかり聞いてくださいました。

旅立ちと出会い。3月4月は、心が揺れ動く季節でもあります。一日一日、大切に子どもと過ごしたいと思います。

メタ認知

新年の挨拶もせぬまま、もう3月に入ろうとしています。すみません。

実は、1月に「謹賀新年」というタイトルで途中まで書いて、そのまま投稿したつもりになっていました。最近、こんなことがしばしば起こります。物忘れが多くなり、考えると気持ちがふさぐので、あまり考えないことにしています。でも、ごめんなさい。

 保護者アンケートを今年度も実施しました。そして、アンケートの結果を先日公開しました。ほとんどは、評価してくださっているご意見でしたが、当然、何件かのご意見は、園の力不足を感じたり、伝える力の弱さを感じたりしました。いろいろなご意見をいただいて、客観的に今の園の状態を分析することが大切だと思いました。

「メタ認知」という言葉をご存じでしょうか。「メタバース」とかに使われる「メタ」と同じ意味です。「メタ」は、高次・高い次元を意味し、自分が認知していることを客観的に認知することです。つまり、自分が出来ていることや、出来ていないことを自分でわかっておくという事です。「メタ認知」が高い人は、複雑な課題に取り組み、問題解決能力も高いといわれています。

アンケートを通して、園の強みや弱みを教えて頂きました。物忘れはさておき、園の状態をしっかりと認知し、「メタ認知」を高め、問題解決にあたっていきたいと思いました。

たてわり保育

12月3日(土)に「きらきらひろば(生活発表会)」がありました。少し紹介すると・・・。

●劇も歌や演奏も一つ一つ子どもたちと先生方とで、手作りで作り上げたあたたかさ感じられるすばらしいものでした。自分の発表だけでなく、周りのお友達のフォローもするなど、子ども達がとてもたくましく頼もしかったです。

●劇の時、上のお姉ちゃんが前に出る時だけじゃなく、座っている時も、ずっと手をつないでくれているのを見て、すごく本人も安心して、参加することができただろうし、親としても安心と感動がありました。

●子どもが子どもを“待てる”姿が本当にステキでありがたかったです。“たてわり保育は”、とてもありがたいなと思います。あすかの子たちは、みんな、“せめる”のではなく、“受け入れ”上手だと思います!

●子どもの可能性を信じることの大切さを再認識しました。

●劇などで次の動作がわからなくて止まっていると、上の年齢の子やお友達が手を引いて、サポートしてくれている姿を何度も見かけました。下の年齢の子や、お友達を思いやる気持ちがしっかりと育まれているのだなと感じました。

●子どもたちが助け合ったり、認め合ったりしているのを見て、改めて「たてわり保育」っていいなぁと思いました。

●素晴らしかったです!感動しました。本番ではドキドキしながら立派にやり遂げることができ、本人は大きな自信につながったと思います。準備段階でも、子どもの気持ちや状況を考えて、先生方が多くのサポートをしてくださいました。子どもに主体性をもたせながら、支えて下さり、毎日が本当に楽しそうでした。

園からのコメント(抜粋)

今回の感想で、本当に多くの保護者の方々が、「たてわり保育」について、とても賛同してくださっていると、実感しました。子どもが知恵や意見を出し合い、工夫して、1つのものを作り上げていく工程は、子どもの成長にとって、かけがいのない貴重な経験です。ちょっとまごまごしていたり、スマートでなかったり、寄り道だらけかもしれませんが、そんな大人から見れば「無駄」な時間や作業が、子どもにとって何より必要です。「無駄の勧め」です。毎日がとてもあわただしく、お忙しいとは思いますが、どうか子どもの「無駄」を楽しめる心のゆとりを、今以上に保護者の方にも持っていただけたら、子どももますます健やかに伸びていくと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします。

このように感想の感想!?を書きました。そして、園だよりには、

この保育園の保護者の方は、真面目で、子ども思いで、とても感性豊かな方が本当に多いと、つくづく思います。今回も、きらきらひろばの感想を読ませていただき、またまた感銘を受けました。「たてわり保育」の意義をしっかりと理解し、納得して、保育内容を支えてくださる。私を始め、保育士たちはそんな感想を読むと胸が熱くなって、「ほんとうにありがたいなぁ」と思うのです。保育士と保護者が円満な関係であること、またお互いを信頼し、リスペクトしていること、これらは、こと、人を育てる者同士(保護者と保育士)の関係の中では、とても大切です。良い関係が、良い雰囲気、良い環境を生み、子どもたちの保育園での暮らしは、更に過ごしやすいものとなります。保護者と保育園が馴れ合いになるのではなく、きちんと思いを伝えあいながら、子どものことを考えていく気風が、あすか保育園にはあると思います。今、いろいろと保育園のことがニュースになっています。何か心配なことがあれば、いつでも聞いてください。子どもについてお話ししましょう。

と、伝えました。子育てが難しい時代だからこそ、力を合わせて取り組んで、楽しみたいなあと思います。

「共に生きる」力

11月10日、17:45~ 地震が来たことを想定し、避難訓練をしました。その時間、正規保育士2人、保育補助3人、子どもが20人ほど園にいました。日中より、圧倒的に少ない保育士でどのように子どもを守るのか。実際に訓練を行ってみて、たくさんの課題が出てきたので、翌日、すぐに会議で検討しました。これからもいろいろな時間帯やシチュエーションを設定し、訓練を行っていきたいと思います。近隣の方や保護者の方も、そのような場面に遭遇されましたら、ご協力をお願いします。その時に、こんなエピソードがありました。訓練が始まって、保育士は、子どもたちをどう守るのか、とっさの判断を迫られていました。幼児さんはいつものように、自分で防災頭巾を被りました。そして次には乳児さんにも、頭巾を被せてあげる行動に。普段のたてわり保育の成果が、とっさの場面でも現れるのだなと、感心しました。普段でも5歳児は、3歳児の話を聞くときに必ず中腰になり、視線を合わせて、話を聞きます。一緒に暮らす中で、教えられたわけではなく、生活から身についてきた力です。大切な「共に生きる」力だと思いました。

子どものものさし

松田道雄(1908~1998)は明治・大正時代の小児科医・評論家で、子どもと母親の立場に立った医療・育児を追求し続けた人として、知られています。松田の本、「子どものものさし」を読みました。一文を紹介します。    『人間はめいめいが心のなかにものさしをもっていて、どの人間にも自分のものさしを使う権利がある。大人は、大人の心のものさしを子どもにおしつけることで、人間が作れると思っている。たしかに大人のものさしだけで人間はつくれる。しかしりっぱな人間はつくれない。りっぱな人間は、自分のすることに責任をもっている。自分のすることに責任をもつためには、自分のものさしではかって、自分で設計せねばならぬ。大人は、子どもに自分のものさしを使う機会を与えねばならない。子どもの心にしかないものを、もっと大事にしなければならぬ。』   自分のものさしを使う機会を大人がどれだけ用意するか、子どもがものさしを使う時、どれだけ寛大に見守ることができるのか、それによって、子どもの人生が変わるといっても過言ではないと思いました。松田の著書は、時代は変わっても、子どもに対する大切な心持ちは変わらないことを、教えてくれていました。

問いを育てる

幼児組は、ピラミーデ教育法を参考にし、保育実践に取り入れています。ピラミーデ教育法は、オランダの教育改革から生まれた教育法で、「体験型共同学習」です。ピラミーデの基本理念は、「自己選択で始まり、自己解決を目指すのが、本来の教育。主体は子ども。大人はサポーター。」と謳われています。自分で選択し、自ら解決しようとする力は、人が幸せに生きていくために、とても大切な力だと考えています。

夏のピラミーデのテーマは、「水」。にじファミリーでは、どろんこの時に、「どろってなんなん?」という子どもの疑問から、泥水をペットボトルに入れ、観察が始まりました。温かいどろんこと、冷たいどろんこがあることに気づき、太陽にあてて実験してみました。子どもたちは、太陽にあてると水が温かくなるだけでなく、量が減っていることにも気づきます。あらたな疑問です。また、「水は透明なのに、海の水はどうして青いの?」という疑問も出てきました。子どもたちは、水の変容について、また、水の性質について、疑問に思ったことを、どんどん科学的な視点で解明していこうと、学びを深めていきました。保育士は子どもの気づきに感動しながら、保育を作っていき、本当に楽しそうでした。「疑問に思う」ことは、学びの出発点。大切なのは「問い」を育てるということ。問われているのは「問いを育てる」大人側の姿勢や視点なのかもしれません。

保育の定石

静岡県で、幼児置き去り事故が幼稚園バスで起き、3歳の女の子が、熱射病で亡くなりました。昨年、福岡県で起きたばかりで、本当に胸が痛みます。

幼児施設で事故が起こるたびに、非難に終始することなく、あすか保育園ではどうだろうかと、必ず振り返りをおこないます。

例えば、朝は、9:15に各クラスと事務所が出欠確認を行います。連絡なしで登園していない家庭にはその後、電話なりITCなりで現況の確認を取ります。また、保育中の置き去り事故も、どこかに落とし穴がないか、いろいろと想定し、未然に防げるよう策を講じてます。

保育は1に確認、2に確認。子どもは、大人よりも動きが速いですし、予想もつかない動きをしたりするので、基本中の基本、保育の定石として、場所が変わるたびに何回も、人数を数えます。子どもはじっとしていないし、人数を数えるだけでも、日に何回もあると、保育士はかなりの労力を要します。しかし、子どもの安全確保のためには、必要だと職員は納得してくれているので、日に何回も何回も数えてくれているのです。

保育理念や保育方針はとても大切だけれども、やっぱり1番大切なのは、かけがえのない命をお預かりしているという自覚。取り返しのつかないような事故は絶対起こさない。これに勝るものはないと思います。緊張感を緩めずに保育していきたいと思います。

夏の子ども達Ⅱ

前回は、保育園の夏の子ども達の姿を書きました。今回は、もう少し歳上の子ども達の、夏の姿です。7月下旬に、2022年度の全国学力テスト(小学校6年生と中学校3年生)の結果が公表されました。2021年度に新学習指導要領が実施され、その中で「主体的・対話的で深い学び」が重視されましたが、残念ながら、それを意識した出題の平均回答率は、今年も低いものでした。子ども達が、「自分で考えて、判断し、行動する。」そういった力を身に着けていくための、学びの道のりは、まだまだ険しいようです。

一方、「夏の子ども達」と言えば、高校野球。毎年、様々なドラマと感動を与えてくれます。今年7月28日に行なわれた奈良県大会決勝。強豪天理高校に、奈良大会決勝初進出の生駒が挑みました。しかし、決勝当日、生駒の部員に新型コロナ陽性者や体調不良者が続出し、登録メンバーは20人から12人に。内、初めてベンチ入りした選手が11人。先発した1年生投手は大会初出場でした。天理は生駒の異変を知っていましたが、天理の中村監督は「手を抜く方が失礼。全力で戦え」とナインに指示しました。9回、生駒高校の攻撃、2死、この時、天理高校が選手だけでタイムを取って、マウンドに集合。主将の提案の下、皆で「試合後に喜ぶのはやめとこう」と決めました。21-0で天理は圧勝しましたが、天理高校はガッツポーズを封印し、粛々とグランドを去っていきました。(日刊スポーツ引用)

後述の天理高校の話しは、「自分で考えて、判断し、行動する」姿そのものだと思います。学びも生活も日々のすべてが、人との関わりの中で絡みあい、営われていく中で、「自分で考えて、判断し、行動する力」は、人と関わりながら育っていくのだと思います。つまり「自分で考えて、判断し、行動する」力が正しく育てば、「思いやりの心が育つ」ということに他ならないと思います。

天理高校の野球部員たちが、人の育ちの道筋を、あらためて教えてくれました。

夏の子ども達

夏は少し特別感があります。夏休みや旅行、祭りに花火・・。保育園でも、プール遊び、「夜の保育園(5歳児が8時ごろまで保育園で過ごします)」や、「夏のあそび会(夏祭り)」、「ウエルカム1年生(昨年度の卒園児が保育園で1日過ごします)」・・。ワクワクがいっぱいです。

「夜の保育園」に参加した5歳児は、「本当に今日は楽しい。楽しくて仕方がない。」と話してくれ、「夜の保育園」を盛り上げてくれる3・4歳児も、当日の遊びの案を出し、みんなで話し合い、イメージを共有化して、お店屋さんを作ってくれました。それぞれの子ども達の意欲的な姿に、保育士もとても驚いていました。

「ウエルカム1年生」では、保育園から招待のお手紙が届いて以降、おうちの人に何回も、保育園に行く日はいつか尋ねていたそうです。当日は、自分でパッと起きて着替えをすまし、意気揚々と家を出たとか。保育園に来ることをそんなに楽しみにしていてくれたなんて、うれしくてたまりません。来てくれた1年生は、とても成長していて、最初は少し照れながら、しばらくすると本当にやさしいお兄ちゃん、お姉ちゃんぶりを見せてくれていました。保育園時代は、毎日のようにトラブル勃発だったことも懐かしい思い出です。

保育士が子ども達を愛し、気持ちを大切に保育してきたことが、確実に実を結んでいることを実感させてくれました。子ども達に感謝です。

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