松田道雄(1908~1998)は明治・大正時代の小児科医・評論家で、子どもと母親の立場に立った医療・育児を追求し続けた人として、知られています。松田の本、「子どものものさし」を読みました。一文を紹介します。 『人間はめいめいが心のなかにものさしをもっていて、どの人間にも自分のものさしを使う権利がある。大人は、大人の心のものさしを子どもにおしつけることで、人間が作れると思っている。たしかに大人のものさしだけで人間はつくれる。しかしりっぱな人間はつくれない。りっぱな人間は、自分のすることに責任をもっている。自分のすることに責任をもつためには、自分のものさしではかって、自分で設計せねばならぬ。大人は、子どもに自分のものさしを使う機会を与えねばならない。子どもの心にしかないものを、もっと大事にしなければならぬ。』 自分のものさしを使う機会を大人がどれだけ用意するか、子どもがものさしを使う時、どれだけ寛大に見守ることができるのか、それによって、子どもの人生が変わるといっても過言ではないと思いました。松田の著書は、時代は変わっても、子どもに対する大切な心持ちは変わらないことを、教えてくれていました。