7月の給食のデザートにすいかがでました。5歳児クラスのAくんが、すいかを食べた後の種を数個持ち、近くにいた副園長に「このタネもってかえっていい?」とききました。副園長は「いいよ」と言ってビニール袋を渡すとA君は、その中に大事そうにすいかの種を入れました。その時、Aくんが「かあちゃん、すいかめっちゃすきやねんな~」とすいかの種をみて言いました。副園長も「そうなん~できたらいいね~」と話をしたそうです。Aくんはすいかが苦手でしたが、大好きなかあちゃんのためにすいかを食べさせたいという気持ちに副園長も感動したとのことでした。
その日の降園時、Aくんの母がお迎えに来ました。副園長はお母さんがAくんに会う前に、今日はすいかの種をお母さんのために持ち帰ることと、どうかA君の思いを受け入れ、もし可能であればその種を一緒に植えてほしいことを伝えました。お母さんもその話を聞き、とてもうれしそうでした。A君もお母さんに、すいかの種をもちかえってお母さんのためにすいかを育てたい意思を伝え、すごくうれしそうに帰りました。
次の日の朝、登園時にAくんが昨日家に帰ってすいかの種を植えたことを話してくれました。お母さんとコーナンに土とプランターを買いに行ったようです。さっそく、Aくんの思いを受け入れてくれたお母さん。A君も昨日植えた種のことが気になるようで、これからどうなるのか楽しみにしているようでした。
数日後、Aくんがうれしそうに「先生みて~」とお母さんの携帯電話に保存していたすいかの芽の写真を見せてくれました。私も副園長もびっくり!まさかこんなに早く芽が出るなんて・・・Aくんの思いが通じたのだと本当にうれしく思いました。そして私たちも、いつしかAくんからすいかの生長について報告してもらうことが楽しみになっていました。写真で見るとすいかは日々葉がどんどん大きくなり、気が付けば実をつけ、すいかの模様もくっきりわかるようになっていました。あの時のすいかの種がここまで大きくなるなんて、私たちも正直思っていませんでした。でも、Aくんだけは、お母さんに食べさせたい思いで実がなると信じて育てていたのです。きっとAくんのその気持ちがすいかにも伝わったのだと思います。
9月26日(火)の朝、Aくんがすいかを持ってきてくれました。どうやら、虫に食べられてしまったのか、すいかに穴があいてしまい収穫したようです。でも、Aくんの顔は満足そうでした。自分でここまで育てたという自信と、何よりすいかの種を植えてすいかができたということを実体験で証明できたことがうれしかったのでしょう。その姿を見ているお母さんもとてもうれしそうで、私たちもほっこりした気持ちになりました。
すいかのたねからはじまった素敵なお話でした。